番外編:SDM勉強会 day8『雑談から見えて来た、次回SDM勉強会』
- 篠崎 聡
- 2021年7月22日
- 読了時間: 5分
今日は、参加人数が4人と少なかったこともあり、雑談の会となりました。
でも、次にやることが見えて来たので、記録します。
天川村課題発見・解決プロジェクトメンバーの奥田さんは、関西学院大学の医療キュレーター実践会のリーダーをされています。
そこに参加している方より、
「先日、介護保険の事を聞きにシニアの方が病院の窓口に来た。病院事務の方が『市役所に行って聞いて下さい』と案内していた。介護保険は病院にも関係する事だから、病院事務が市役所の担当窓口に繋いであげてもいいのに、とモヤモヤした」
という話を聞いたそうです。
社会は小さな組織(システム)の集合体です。
組織(システム)の構成要素として、組織に所属する人がいます。
組織(システム)は、その組織を組成した目的が存在し、その目的を持続可能な形で実現するために、何らかの収益を必要としています。そしてその収益で人を雇っています。
今回の事例は、
病院:「病を治す」という目的を持って「治療」という機能を持っている
役所の担当課:「町ぐるみで介護する」という目的を持って「介護保険」という機能を持っている。
の2つの組織があり、その役割分担を知らないシニアが、担当違いの病院に、介護保険の相談に行ったという構図です。
こういった事は、世の中にとてもよくある事ですよね。社会システムを理解していない一般人には、どこに何を相談したら良いかなんて、よくわからないんです。
病院は、事務員を「病を治す」という目的で雇っている訳で、役所の仕事を肩代わりするために雇ってはいません。なので、ある意味、上記病院事務の方の対応は当たり前なのですが、これって何とかならないか?という事を話し合いました。
システムAとシステムBが連携して生まれるシステムを、我々はSystem of Systemsと呼びます。
以下は、白坂成功先生がよく使うSystem of Systemsの事例です。
デジタルカメラで撮った画像を、プリンタで印刷するシステムです。
カメラ、パソコン、メモリー、プリンター、ケーブル。
それぞれ違うメーカーが作っています。
規格化されたインターフェイスを用いているので、繋がりますし、印刷できます。
でも、何故か印刷できないこともあります。
この時、どこに問い合わせたら、この問題を解決できるでしょうか?
現時点では、どこに問い合わせても、この問題を率先して解決する動きにはなりません。
印刷できない原因がどこにあるのか、全くわからないため、原因の切り分けに自社の資源を使っても、他社が原因であった場合、その工数はある種「無駄」となるので、積極的にどこも動かないのです。
病院事務が、介護保険のために、積極的に動かなかったのも、この構図です。

これを解決する方法は?と、奥田さんに問われて、パナソニックのAiSEGというHEMSの事例をお話ししました。
HEMSは、Home Energy Management Systemの略で、以下の様に、様々な機器と繋がって機能する、まさにSystem of Systemsです。

AiSEGは、接続を確認した機器が、業界最多です。
この「接続確認」は、ただ単に「接続して動いた」だけを確認している訳ではないのです。
例えば、パナソニック製のAiSEGに、三菱電機製のエアコンが接続されていて、遠隔制御機能を提供していたとします。
この遠隔制御がうまく動かなかった時、お客様はどう動くでしょうか?
パナソニックに問い合わせすることもあれば、三菱電機に問い合わせをすることもあります。
提供している機能が動かなかった訳ですから、我々は責任を持って対応する必要があります。
なので、どちらに問い合わせが行っても、一次受付し、電話でわかる範囲で原因の切り分けを試みます。そして、両社のCS部門が連携して、解決に動きます。この様なお客様をたらい回しにしない体制まで確認して初めて「接続確認」と称しているのです。とても手間とコストがかかりますね。
これと同じ事を、病院と市役所でやろうとしたら、これまた大変ですね。。。
奥田さんより、もっと簡単な方法はないの?と問われました。
「ガジェット方式がある」と答えました。
「ガジェット」というのは、買って来て、自分で繋いで動かす事を楽しむ世界観です。
うまく繋がらなかったら、自分で調べたり、有識者のコミュニティで尋ねたりし、Wikiとしてナレッジを整理していく人も出てくる文化です。
このやり方はとても簡単です。
「ガジェット」を使うのは、イノベーターやアーリーアダプタと呼ばれる人々。
この2つを合わせた普及率26%のキャズムを超えると、成長期に入ります。
成長期に入ったら、もう「ガジェット」ではありません。成長期に入っている訳ですから、アーリーマジョリティやレイトマジョリティでも使えるものに、サービスを成熟させておく必要があります。

この様な議論をヒントに、どうすれば、小さな組織の集合体である社会が、うまく回る様になるのかを考えていくことにしました。
小さな組織はそれぞれ目的を持っていますが、上位目的は必ず重なるところが出て来ます。
病院も、市役所も「シニアが最期まで幸せに生きるのをサポートする」という上位目的は同じ。
この上位目的を考えて動くという議論もしました。
これは、社会だけでなく、それぞれ小目的を持っている部や部門、事業部の集合体である企業も同じです。そういう意味では、これまでSDM勉強会の対象として来た「新しいことに取り組む企業にして下さい」というテーマとも通じる部分があると感じました。
次回以降のSDM勉強会は、このテーマを構造化しつつ、医療キュレーター実践会や、イノベーション研究会でのワークショップを設計する場となりそうです。

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