天川村課題発見・解決プロジェクトは、関西学院大学イノベーション研究会に所属する4名で構成されています。
そして「システムデザイン」という共通言語を持っています。
この「システムデザイン」の持つ力をご紹介するために、この番外編をお届けします。
「NPO法人 生態会」という、ベンチャーを支援する法人があります。
「関西の起業エコシステムを活性化させる」ことを目的として活動している団体です。
プロジェクトメンバーである下川さんが、生態会の短期ボランティアをしており、上記目的達成のためにどうすれば良いか、「システムデザイン」を用いて考えるワークショップを企画されました。
関西学院大学で富田先生から「システムデザインマネジメント(SDM)」を学んだメンバーが召集され、グランフロント大阪にて、4時間1本勝負のワークショップが始まりました。
最初に、下川さんより、システムデザインの説明。
そして、西山さんより、生態会の紹介がありました。
その後、いくつかの質問を経て、ワークが始まりました。
最初は、正しいブレスト。
「関西ならではって何?」というお題で、連想して行きます。
ブレストはアイデア出してはありません。
ワードを連想して出していく作業です。
連想法なので、とにかく他人の発想に乗っかることが大事。
お題から外れたって構いません。
予期しないものが出てこないと意味がありません。
正しいブレストを行なった後は、二軸に切って、出てきたワードを配置してみます。
軸は、イノベーティブで新しい切り口を探すことが重要ですが、あまり軸に時間をかけずに、何度も軸を切り直すのもポイントになります。
配置したものを眺めて、インサイトを得ます。
インサイトとは、本質的な気づき、洞察です。
このインサイトを得るのが大事です。これを得るためにワークを行なっています。
以下が、篠崎が所属したAチームの二軸図です。
横軸は「儲かる⇔ためになる」
縦軸は「あいまい⇔はっきり」
としました。
これで得たインサイトは、
「あいまいで、儲かるって無いな。。。」
「京都って、心ははっきりしているけど、言わない(あいまいにして、察せよ!)よね。」
「そういえば、京都って起業のエコシステムってありそう」
「『関西ならでは』でワークしたけど『大阪ならでは』かも。関西=大阪のイメージあり」
といった所でした。
このインサイト、後々のワークで効いてきます。
次は、バリューグラフです。
下の写真は「水族館はなんのため?」でバリューグラフを作った例です。
黄色は全て水族館の目的になります。
青色は当該目的の代替手段です。
このバリューグラフから得たインサイトが赤になります。
インサイトを得るために、バリューグラフを作って行きます。
お題は「関西で起業するのはなんのため?」です。
Aチームのバリューグラフは、以下の写真です。
バリューグラフの右のほう「関西を市場とするため」を中心にインサイトを得て行きました。
「関西ってある程度市場が大きくて、東京ほど競合は多く無いよね」
「インフラも整ってるし、コストも東京ほどかからないよね」
「関西を市場にするってことは、関西の課題を解決するってことだよね」
「じゃあ、グローバルな課題を解決する人は、東京に行ってもらっても良いよね。関西の課題を解決する人だけ相手にしたら良い」
「関西って田舎から大都会まであるから、日本の縮図、世界の縮図かも。関西で磨いて外に出るっていうのもあるね」
「そうなってくると、関西の課題を見つけてあげる機能が必要かも」
「そうなると、ライフサイクルが描けるね。最初は関西出身の起業家にフォーカス。次に西日本出身者が東京まで行かずに、関西で起業する。最後は、この関西での起業エコシステムが魅力的になり、東日本出身者が東京をすっ飛ばして、関西で起業する。そうなるとすごいね!」
Aチームが得たインサイトは以上です。
最後は「これまでに得られたインサイトを元に、生態会が『関西の起業エコシステムを活性化する』ためのソリューションを提案せよ」です。
以下写真の、ソリューション創出の基本プロセスで、ソリューションコンセプトを作って行きます。
ソリューションコンセプトは、以下写真の形式(CVCA:顧客価値連鎖分析)の方法で記述します。
サプライチェーンを描くのは当然の事、そのお金を支払う源泉となる価値連鎖を表現することがポイントとになります。
Aチームが描いたCVCAが以下の写真です。
これを作るにあたり、最初にステークホルダーを洗い出しました。そして価値連鎖を描いて行きました。
真ん中に「生態会」。その下がエコシステムで支えたい「関西出身の起業家」です。
「生態会」の上は「関西で困っている人」。この困りごと情報が価値の源泉となっています。
困りごと情報は、関西出身の起業家に渡りますが、初期の段階ではそこから対価を貰うことは難しい。
なので、左側にいる「投資家」「VC&CVC」に、困りごと情報と解決ベンチャー情報をセットで提供し、対価をもらいます。
この情報を元に「投資家」「VC&CVC」が「関西出身の起業家」に投資をするかもしれません。
これを『困りごとリサーチ分析ナレッジ事業』としています。
別の収入も考えたいので、右側のステークホルダーに対する『教育事業』を置きました。
右側にいる「有名でない大学」は、関西出身の学生が多く、VUCAな時代に生き抜く教育を行わなければならない立ち位置にいます。彼らの困りごとを、寄附講座の形で解決し、寄付をもらいます。
「関西出身の起業家」から研究ネタをもらい、寄附講座で研究し、研究結果を「関西出身の起業家」に返します。そう行った活動の中で見つかった優秀な人材を、ベンチャーに紹介することも可能です。
『教育事業』でもうひとつ。エコシステムを考えるなら、将来の起業家を育てる必要があります。
「関西の子供」に対して、起業家教育を行います。
その原資は、自治体から貰うとしました。
起業家教育を受けた「関西の子供」は「将来の起業家」となり、税金を払います。人口が減り、税収が減る自治体との共同教育事業を行うイメージです。
この様に「生態会」が「関西出身の起業家」に対して、様々なステークホルダーとのマッチングを行う『マッチング事業』も存在しています。
この様な価値連鎖で、エコシステムを作ってはどうかと考えました。
そして、このソリューションコンセプトを「関西密着課題解決ナレッジ集積所」と名付けました。
これを、ソリューション創出の基本プロセスに当てはめたのが、下の写真です。
以上が「システムデザイン」を用いて、ソリューションコンセプトを出して行ったプロセスです。
天川村の課題発見・解決へのアプローチも「システムデザイン」を用いています。
天和の里でのワークショップも「システムデザイン」を用います。
どんなソリューションコンセプトが出てくるか。楽しみです!
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